IT英語学習法カンファレンスに参加してきた #itencon

IT関連の技術者であればどこかで必ず一度は立ちはだかってきているであろう、『英語の壁』。

当勉強会はその『IT英語』に関して、あの牛尾剛さんが自らの経験を元に整理し、構成した英語学習法メソッドについて講演して頂けると言うことで参加してきました。


まずは前段から。牛尾さんはアメリカで行われた『Agile 2011 Conference』に参加。

以下が講演時の資料等の情報。


イベント開催後のパーティでは大喝采も浴びておられます。(以下動画はその一部)

ここに至るまでに、牛尾さん自身様々な取り組みをされて当時のイベントに臨んでおられました。以下は牛尾さんのブログより関連記事を一覧化したものです。(つうか今回の勉強会の話を聞いた上で拝読すると、相当に濃厚なコンテンツですぞ、これは・・・)


そして時は流れ2011年10月、Scrum Gathering Tokyo 2011が終わった頃の事。中村 薫(TwitterID:@kaorun55)さんがMS本社のイベントに参加することになり、英語学習についてどうすべきか悩んでいたところ、紆余曲折(Tomoharu Nagasawa(TwitterID:@tomohn)さんの無茶振り→牛尾さん快諾)あり、今回の勉強会開催が実現。

開催場所は日本マイクロソフト株式会社 品川本社。勉強会(&社会人を通じて)初のMicrosoft社来訪でしたが、いや〜スゲかった。何から何までスゲかった。


・・・というわけで、上記の体験段をベースに、非常に分かり易く、斬新で、目からウロコ満載な英語学習法の『メソッド』の牛尾さん解説オンステージ、開幕です。以下メモ。



はじめに

  • アジャイルの話なら慣れているけど・・・
  • 英語は長年はやっていない
  • 英会話教室に行っても居ない。
  • でもバンバンしゃべれる。QAも出来ている。
  • これは勉強法のおかげ。
    • オリジナルではない。
    • 英語力に自信は無いけれど、メソッドには自信がある。
    • 職業柄、メソッド屋なので。
    • 沢山本を読んだ。
    • 気付き:
      • 本当にイケてて、効果のある方法は共通している。
      • 細かいところは異なってはいても共通している部分はある。
      • 今回はその辺りをメソッド化してみました。

英語勉強法の法則

  • 対象:
    • 英語を短気に仕事で使えるレベルにしたい
      • 英語の技術書、webサイト
      • 海外のカンファレンス
      • 技術系の外タレと友達になりたい
    • 英語でダイレクトに英語の歌や映画を理解したい
  • 制約
    • 海外渡航経験なし、海外の英語を話す友人も居ない
    • 英語で直接仕事をする機会はない
    • お金、時間もない
    • 大人になってからの学習
    • この辺、だいたいの人って同じでしょ?
      • 仕事で普段から英語使ってる人は出来てるのかも知れないけど...
      • この制約の中でAgile 2011にて無茶振りされた。1〜8月はメチャメチャ練習した。
  • 英語学習の難しさ
    • 英語を使える環境にない
    • 英語勉強法は多いけどどれが良い?
    • なかなか上達しない/なかなか言葉が出てこない・・・
    • ※3ヶ月でOKです。仕事のついでに可能です。
  • 英語学習法が上手く行かない理由
    • 英会話教室/英語教材/勉強法の本
    • 自分のゴールにあってない/自分の環境に合っていない/やったけど上手く行かなかった...
  • 英語勉強法の分布:目標にあった勉強法で行う必要がある。大半の人は工数を掛けてしまい、効率の悪い・・・になってしまう。
    • 仕事で必要なスキルレベル
    • お手軽だが効果はそれなり
    • 通訳/英語専門家専用
    • 効率が悪い勉強法
  • 英語を身に付ける力を身に付ける
    • ソリューションコンセプト
    • ベルリッツとか激高!
      • (川口さん)『ベルリッツを使ってましたが、460→700台にレベルアップしました。』
      • 英語学習もMoving Target
        • 伸び続ける訳ではない。上がったり下がったり。
        • 次の段階にチェンジしないと、踊り場的な停滞期を迎えてしまう事も。
        • 理屈を知るべき。
  • Don't waste your time!(ダメな例)
    • いきなり英会話スクールに行く
      • 発音がメタメタでも訂正はしてくれない
      • ただ単に外人と話してもレベルアップするわけではない。
      • 講師が悪かったらDisってた(by川口さん)
        • ベルリッツは講師をバンバン変えてました。
      • 効果を上げるタイミングの問題もある
      • 英会話を利用するとしても、素振りしたり、筋トレしてから行くとかが大事。
    • 日本語経由の英語学習
    • 単語や文法型/読み書き中心学習法

優良英語学習法に共通する3つの戦略

英語脳
  • 英語を英語のまま聴き、話す事が出来
  • 英語を英語のまま理解し、考える事が出来、
  • 英語を考えることなく反射的に反応出来る脳。
  • ※英語で反応出来る反射神経を鍛える。英語脳を著しく損なう学習テクニックもあるので注意!
    • →例)語彙を増やすとこの脳は落ちる。
      • これで落としつつも、優良英語学習法で上げる戦略もある。
      • 喋る機会があるときに、ピークを持って行く。
  • ベイビーラーニング
    • 赤ちゃんが育ったときと同じように勉強。
    • 赤ちゃんが自然に英語を身に付けるテクニック。
    • 難しそうなイメージはあるけど・・・?
      • 例)水:『water!』と即座に反応 / 文、単語でも反射的に言葉が出る脳を作る。
レスポンシブル ボキャブラ
  • 牛尾さんによる造語。
  • 頭で考える事無く、反応出来るボキャブラリ・文法を増やす。
  • 日本語を介さず英語のママで理解出来る事を増やす
    • ※本当の意味で使える語彙を増やす
  • ボキャブラリ獲得の段階
    • 日本語を介している状態
    • 英語で語彙を覚えた状態
    • 考えなくても反応出来る状態

戦略変更とフィードバック
  • ボキャブラリを鍛えていると英語脳が低下する。
  • 学習者の状態により、有効なやり方は常に変化する
  • 原則を踏まえ、状況に合わせて学習方法を変える
  • 〜英語脳とボキャブラリ脳のバランスを取る〜

優良英語学習法に共通する5つの原則

  • 勉強している人には大体共通している。
  • これに外れると、大抵英語脳から外れていく。
サウンドファーストの原則
  • 日本人が英語の音声を聞けるためには正確な発音が必要
  • 正確な発音イントネーションが英語脳を生む
  • 意味の理解はずっと後で良い
  • ※英語が読めるだけで良くても、最初に鍛えるべきは『音』の要素
  • ※正確に発音出来ないと理解出来ない
    • なぜサウンドファーストか
      • 脳のリソースを消費するから。
        • 英語発音を日本語として理解するために、頭の中で変換してる。(『あぁ、こいつは『あーゆー』って言うとるな)
        • こういう発音は、聞いている方もイヤなものである。
          • 牛尾さん自身、メアリーポッペンディーク氏より『日本人の発音は聞き取りにくい。あなた(牛尾さん)がいてよかったわ〜。』と言われた事が。(日本人を介して通訳/同席を頼まれた時のお話。2人だけになった際に)
        • 意味として分かるけど嫌なものである。(例:外人が発する、わざとらしい日本語を想像してみよう。聞き取れて意味も分かるけど...)
        • ※発音出来ないと聞けない。推測の世界になってしまい、大変。
      • 日本語的発音イメージが強化される。読んでいても、悪い発音イメージが付いてしまう。
      • 例え本を読むだけでも、発音は練習すべき。
    • 英語とノイズ
      • 嬉しい言葉をもらっても、6歳以上の日本人には多くの音がノイズに聞こえる。
      • 本の学校では発音を教えない。
      • 日本語と英語で同じ発音のものは無いと思って置いた方が良い。
    • ノイズのフィルターを取るにはどうするか。
      • 英語の音声を発音出来ると良い。
      • ネイティブは子音だけで発音出来る。
      • 1ヶ月で出来ますよ。
      • (ビデオを観てみましょう)

    • 一番最初にオススメするのはイントネーションと個別の音の発音練習。
      • CNNを聞いても音を聞き取れる自信はありますよ。
  • リスニングの段階
    • (1).単一の音が聴き取れる
    • (2).単語単位で聞き取れる
    • (3).イントネーション・アクセント音が全て聞き取れる
    • (4).リダクション音声変化が聞き取れる
    • (5).聞いて意味が考えずに分かる
    • (6).ぼそぼそ声や違う地域の英語が聞き取れる


      • ※多くの人は、いきなり(5)に行こうとしている。本来は、(1)〜(4)のステップを踏むべきなのである。(これには目からウロコ。そりゃぁ大変なはずだ...)
      • ※イントネーション、アクセント重要。
      • (1),(2)は1ヶ月あれば出来る。
      • 英語力無い=ボキャブラリが無い。
  • ※意味は一切考えなくて良い。
  • ※音声、発音、音楽を聞くように。
  • 『まだお前等は早い!』勝手に分かるようになる。
  • 川口さん:『カンファレンスを聞きましょう。infoqとか沢山あるんで・・・』
  • 短音発音でスペルが分かるようになる。
    • この音はこのスペルだろう、と推測が付くようになる。間違ってもOK。
  • 聞こえた通りのスペルで。最初は全然間違っててもOK。後で答え合わせをすれば良い。
ダイレクト理解の原則
  • 英語は日本語を仲介せず、英語のまま理解する。
  • 英語と日本語は本質的には翻訳出来ない。
  • 日本語経由の英語学習は英語脳を大幅に低下させる
  • ※英語は英語のまま理解するように頑張る。
牛尾さんの講演では、この『消毒』という概念・独特の言い回しが良く出てきています。
シャドーイング中心原則
  • シャドーイング中心のプラクティス】(※[★]印は必須のもの。)
    • シャドーイング[★]
    • ストレートラインのリラックス
      • 牛尾さん自身、シャドーイングし過ぎて喉を壊した経験あり。
      • ストレートライン(喉腹・声帯・舌根)をひたすらリラックスさせる。
      • 日本人は発音硬い。
      • ※これはボーカルのテクニックでもある。
コンテキスト理解の原則
  • 語彙や文法はシチュエーションの中で自然と理解する
  • 個別でも単語や文法を覚えようと頑張らない
  • 教材もシチュエーションがあるものを採用する
  • ※状況の中で無理せずすこしずつ増やす。
  • 【コンテキスト理解のプラクティス】(※[★]印は必須のもの。)
    • スーパーメモと翌朝復習[★]
      • 脳にも残りやすい。
    • やっとむメソッド(多読)[★]
    • 単語/文法を学ばない
      • やるんなら後で『消毒』が必要。
    • シチュエーション教材(CD)
      • Fluent English (ESL)

        Fluent English (ESL)

      • ベルリッツはひたすらこの手法。以下に書評を抜粋したものを載せておきます。
「アメリカで生活したい人が身につける」英語を学ぶためにはこれ以上の教材はなかなかないのではと思います。
この本で、特にいいのは単語の充実さです。 TOEICのように「全世界、TOEICという場で共通したところで使える」単語ではなく、
アメリカ社会で普通に使われている単語ばかりです。
しかも、英和辞典などで調べてもよく意味が理解できず、ネイティブに聞いて初めて意味が理解できるフレーズも多いです。
正に「日常会話」の必須本です。 
海外に在住している方なら、どんな発音がネイティブが難しく感じて話が通じにくいかーこの本はそういった「ノンネイティブ」の発音の
ウイーク・ポイントを全体的にまとめてあるので、発音の練習をしながら基本的な生活用語が覚えられます。

選択と集中の原則
  • 最初はアメリカ英語と英国英語を選択する
  • 選択と集中のプラクティス】(※[★]印は必須のもの。)
    • 選択英語の教材選択[★]
    • 専門領域の絞込[★]
    • 目的による絞込
    • infoQによる学習
      • インタビューはスクリプトも載っている。
      • スクラムガイドも英語音声で。(※下記サイトから入手可能。購入手続きが必要ですが、$0.00(無料)で簡単な会員登録→購入手続きを済ませると、購入完了段階でダウンロード出来るようになります)
そして・・・
  • 英語脳が出来た後での英会話。
    • やるならここを組み立ててから。

英語学習の具体的手順の例

  • (1).ターゲティング
  • (2).発音/イントネーション理解
  • (3).単一CDの聴き込み
  • (4).単一CDのシャドーイング
  • (5).大量インプットと意味の理解

(3),(4)はイテレーションで繰り返し実施。

学習の計画とフィードバック

  • [step0]:英語学習ステップの選択、地域と目的の確認
  • [step1]:現在のレベルの確認、今の英語脳のレベル・今のボキャブラリとスピード
  • [step2]:2週間分の英語学習法の選択
  • [step3]:step1に戻る
    • シャドーイング、ディクテーションは永遠のテクニック。
    • 真似すると聞き取り易くなる。
      • 期間について:『僕らは何となく2週間ですね(笑)』 (by 牛尾さん)

質疑応答

  • [Q].英語脳スキル、上がった/落ちたの判定は?
    • 反射、反応速度で。
    • 発音で。
    • 発音は録音して確認することが大事。
  • [Q].開く系のおと、細い系の音
    • これを間違えると認識してくれない。
    • 響かせる:母音と子音
      • 日本語:母音の方が大きい。
      • 英語:同じ位。
  • [Q].4ヶ月で行けるとあるが、1日どれくらいこなせば?
    • 発音:15分。
    • 単一CD聞き取りは気合い入れた方がいい。
    • 電車行き帰りで1枚。
    • 発音と聞き取りは並行可能。
    • シャドーイングは初期段階ではNG。
      • 発音のカベを越えると大丈夫。やっとむメソッドとかも同様。


ここで牛尾さんによる講演本編は終了。しかし程無くして参加者(且つハイレベルな実践者)の方々による経験談・独自のメソッド・オススメ参考文献などの発表(さながらミニLT?)が続きます。


  • 97%の法則(川口さん命名)
    • 1ページ内に97%意味の分かる語彙で構成されているような教材を選ぶ。すると残りの3%は分からなくても読み飛ばして理解することが出来る。
  • 週の行動をタイムボックス
    • 朝の通勤と夜の通勤は時間の使い方が全く違う。
    • 耳に入れる系は朝。夜は暗記物を。(by 高橋一貴さん)
    • 『朝は英語読んで、夜はジャンプ読む』(by 川口さん)
    • 仕込みの時間を作って遂行する。
    • 火曜日は英会話の時間、水曜はWeb・・・など。
    • ※英語に限らずオススメの方法。週間時間割を作る。
  • 仲間を作る。
    • 友人と2人でベルリッツを受講していた時は、お互い研鑽しあってモチベーションを高め、継続していた。

  • 書籍『English Grammar in Use』

English Grammar in Use With Answers (Book & CD-ROM) : A Self-Study Reference and Practice Book for Intermediate Students of English , Intermediate

English Grammar in Use With Answers (Book & CD-ROM) : A Self-Study Reference and Practice Book for Intermediate Students of English , Intermediate

  • 子音:th, l, s, d, z:口とがらす系の子音発音について
    • 彼等は口がだらしない→教育を受けてない。そのかわり子音が発音しやすくなる。
      • この事実に気が付いた時は『お前らずるいぞ!!』
    • 舌のセンターポジション』という意識での発音。
    • ネイティブの口を見ておけ=舌が見えているから。
      • 外人が喋っていると舌をモロに見せている。
    • 喋れたら聞ける。喋れないと聞けない。
    • インプット重要。ある程度入っていると書けるようになる。


  • Yahoo翻訳に掛ける→文法が綺麗だと訳も綺麗に。
    • 文法翻訳もサイトによって違う。
    • 牛尾さん:英文書くときは日本語で考えない。翻訳機通すのは気持ち悪いので。


時間にして約2時間30分。これまでの常識を覆され、目からウロコなメソッド満載の非常に充実した、有意義な時間となりました。

講演時間中も常に参加者の方々の『おぉ〜〜』『うんうん…(頷き)』と言った感嘆・納得・驚嘆の台詞がそこかしこで連発してるような状態でして、自分もここまで反応が顕著な勉強会は初めてでした。

会の終盤には、

といった声も挙がっており、年明け2月〜3月辺りには続編・成果報告会的な何かが開催されるかも。楽しみですね。

そしてこの熱量・勢いに任せて(笑)、上述の『UDA式30音トレーニングDVD』も注文してみました!! 発音レベルから1歩ずつ、積み重ねて行ければと思います。


素晴らしい講演をして頂いた牛尾さん、会場提供して頂いた長沢さん、発起人&主催者の中村さん、そして今回参加された皆さん、ありがとうございました!!