『Enterprise User eXperience Design -ユーザー中心設計の実践』に参加してきた #devlove


(前略)今回は、SIerにてユーザー中心設計の取り組みを組織で始め、現場での実践を推し進めている、
日立ソリューションズの柳生大介さんに、その取り組みについて紹介頂けることになりました。

柳生さんの話を経て、私たちが現場で何から始められるのか、議論しましょう。
どんな一歩をどうやって刻むのか、各自が持てるようにしよう。

と言う訳で『前回』に引き続きの今回。(前回参加レポートは以下)


開催会場はKDDI ウェブコミュニケーションズ@麹町。当日は40人近い参加者が集まっておりました。

開場〜はじめに


  • DevLOVE初めての人のためのご紹介(詳細は割愛)
  • 今後は日本全国各地でやりますよ!
  • ML/Facebook/Doorkeeperにjoin!
  • 色々なテーマでやってます。
  • 現場に取って良いと思えることであればなんでもやろう!というコンセプト。
  • 今後の予定等々...

日立ソリューションズのUX向上施策

  • 日立ソリューションズ 柳生大介氏
ユーザーに快適に使ってもらえるシステムを作る為には、利用するユーザーの視点で考える必要があります。

ユーザーの満足度をさらに高める為に、日立ソリューションズでは2007年からUX(ユーザエクスペリエンス)の取組みを開始しました。
私たちが作るソフトウェア、システム、サービスの価値を向上するためには、このUXが必要であると考えます。

まず、当社がUXに取組み始めた経緯と、当社が考えるUXについて説明します。その後、当社のUX施策を事例も踏まえてご紹介いたします。

まずは今回の発表内容、以下の記事がベースとなっているそうです。

また今回『対象領域』としている部分として以下のスライド資料が参考に挙がっていました。のでUP。

今日は上記スライドで言及されている『利用時の品質』にフォーカスした内容となっています。

と言う訳で、これらを踏まえつつ以下講演内容メモ。



  • この画、真ん中の文字は何に見えますか?
    • 横で見るとA/B/C、縦で見ると12/13/14。どちらでも見える。
    • これは文脈効果・または認知の仕方の表れ。認知の仕組みを確認するためのもの。
    • 前後の情報から判断する。今回の話もその辺を踏まえて説明する事が大事。

1.自己紹介

  • 1997年 独立系ソフト開発会社に入社 社会人スタートITブラック四天王でググれば出てくる会社に努めてました
  • 1999年 転職後SE 当時の日立システムエンジニアリング
  • 2005年 支援系の部門に異動
  • 2007年 UXに取り組み始める
  • 2010年 人間中心設計専門家として認定
  • 人間中心設計専門家の認定を受けています。

2.UXに取り組み始めた経緯

  • 使い難いという評価:『使い難いねぇ、これ』
    • 使い易いシステムを作る手法
  • 手戻りの発生;『これじゃ使えないよ!』
    • 要求を正確に把握しよう
  • 機能中心の考え方:機能が沢山あればいいと思ったけど『何を使えばいいの?』
    • 人間中心の考え方へ
  • UXで解決しよう!

3.当社が考えるUX

  • 元々漠然とした概念。
  • User eXperience(UX)
    • ユーザの体験に着目する
    • 体験を豊かにする事を考える
    • 結果として付加価値の高いものやサービスが作れる
  • 『コーヒーの価値』を例に取る:
    • 缶コーヒー(120円)→【コーヒーを飲む】だけ
    • シアトル系カフェ(350円) →【くつろぎながら】の付加価値をプラス。
    • ホテルのラウンジ(1100円) →【行き届いたサービス】の付加価値をプラス。
  • 『誰のための◯◯◯◯?』と問い掛ける方法が一番分かり易いのかもしれない。
  • 最近の動向
    • 社内システムは使い難いという認識→見た目や操作性が悪くても構わない?
    • マニュアルを見て操作を覚えれば使える→慣れれば問題無い?
    • スマホタブレット端末など、直感的で使い勝手の良いUIが普及→このようなUIに慣れた人が増えている。
    • 使いやすさと見た目の良さがより重要に。
    • UXが不可欠に。

4.当社のUX向上施策

  • 人間中心設計プロセス:4つのプロセスを回すよう推奨している。
    • 1.利用状況の理解と明示(As-Is調査)
    • 2.ユーザー要求の明示(As-Is調査)
    • 3.ユーザー要求を満たす解決策の作成(To-Be検討)
    • 4.要求に対する設計の評価(適宜反復)...解決策がユーザー要求を満たす。
  • 期待される効果
    • 真のユーザニーズを把握
    • 問題点を早期に発見、対策
    • ユーザの満足度向上
    • マニュアルを簡素化
    • 導入教育や問い合わせの工数を低減
    • 等など。
  • 懸念事項
    • 実施期間と費用が必要。
    • →一般的に上流工程で2割程度増加
    • 費用対効果が示しにくい
    • →理解してもらうのが難しい…
    • 良いものなんだけど…社内で理解してもらうのは大変。
  • 当社で推奨しているUX向上施策;この中の要素を単発or複数実施している。
エスノグラフィ調査
    • 難易度は高い。観察する能力が必要
    • ユーザ自身が気づいていない課題や要求が見つかる(言葉よりも行動に現れやすいため)。
    • 観察/分析仮説構築のステップで進める。
グループインタビュー
    • なぜなぜ:質問の深掘りをして行こう。推奨。
      • でも聞き過ぎると詰問と取られる可能性も。聞き方も工夫。弟子が師匠に聞く体で行くと良いかも。
    • 難易度は低い
    • なぜ?と思う観点を持つ
    • 親和図法で分析、潜在ニーズを抽出したらブレストで実施検討
ペルソナシナリオ
  • 事例:論文公開サイトの改善案件でペルソナを作成して活用
    • 論文の投稿検索閲覧が出来るWebサイト
    • アンケートを利用し、4名のペルソナを作成(投稿する人、管理する人)
    • また、ペルソナを毎にシナリオを作成(論文投稿、検索)
  • 『この人のため』という共通の想いを持ち、ペルソナの視点で仕様を検討した為、仕様がぶれなかった。
  • お客さんからも『◯◯さん(ペルソナの人名)ならこれ、見つかるかな〜』という言葉も聞かれた。
インスペクション評価
    • レビューと同意。
    • 画面仕様書や画面仕様があればすぐ出来るところがポイント
    • 難易度は高い。
    • 専門家が入れば、比較的コストを書けずに実施可能
    • 一般的なユーザビリティの観点が基準
    • 他の施策と組み合わせて実施することが多い
ユーザビリティ・テスティング
    • 無ければプロトタイプでシミュレーション等も。
    • ユーザーは考え込むと黙る:その時に『今どういった事を考えてるか』を言葉に出してもらう。
  • 専用の設備:簡易ラボを用意。
    • 見られる意識を軽減してテストを行う事が出来る。
    • 開発者の人は皆このテストを実施して凹むw ユーザは言いたいことを言う。
    • 三者の視点は重要と気付く。そういう視点で考えないとイケないんだ。と。
  • 難易度は中:
    • 観察する能力が必要となる。簡易的にでも実施するほうがよい。(第3者の視点が重要)
    • 手書きの画や画面仕様書でも実施出来る。紙芝居のイメージで操作してもらう
    • 5人のユーザを対象に実施することで約80%の問題を抽出することが出来る(by ヤコブ・ニールセン)
    • (※動画事例でハードディスク暗号化製品のペーパープロトタイプを紹介。)

成果と課題

  • 成果
    • 開発者の意識が変わった。機能中心から人間中心へ
    • 操作性を改善出来た
    • 下流工程の工数を削減出来た
    • お客様から『使い易い』との評価を得た
  • 課題
    • 定性的な評価だけでは無く、定量的な評価も必要
    • UX関連ノウハウの横展開
    • UX施策を実践出来る人材の育成

質疑応答

本編講演内容が終わったので休憩予定時間まで幾つかの質疑応答がなされてました。

  • [Q].自社でもUX部門を立ち上げている。がしかし実案件につながる取り組みが出来てない。ビジネス的な話:UXやユーザビリティにお金を使ってもらわなければ成らないと思っているが、どういう案件だとUXなどが提案通りやすいか?
    • [A].一番多いのは自社製品の開発。融通が効きやすい。研究開発的なものだと適用させやすいかも。受託開発とかだとなかなか難しいかも…提案は通っても受注とかまでは...
  • [Q].UXセンターを作る時に社内で啓蒙活動等をやられていると思うが、その辺の詳しいところを。
    • [A].組織を作る:割とタナボタ的に出来たw 親会社(日立製作所)からデザインをやってる人が来て先導してくれて、今がある。
  • [Q].費用対効果が示しにくいという点。自社製品だとしてもその点難しいのでは無いか。良く突っ込まれる。何と答えているか?
    • [A].費用対効果については、そういう説明はしていない。どうしてもって時にはネガティブな情報をまず提示し、改善することで効果を強調する。(***する事でこれだけ削減出来ます!みたいな)

休憩(5分)

ここで5分ばかし休憩タイム。この時間でなごやの地からはるばるやって来たうさみみさんこときょん@うさみみモード (TwitterID:@kyon_mm)氏がここぞとばかりに柳生さんに質問を投げ掛けておりました。この2人の質疑応答で結局5分掛かってしまっていた模様w ちなみにこの時のやり取りは早速きょん君がブログにUPしておりますので併せて御覧頂けると当日の状況が把握出来るかと思われます。


(柳生さんに至近距離でまさk...いや熱い質問を投げ掛けるうさみみさん。)

WhyとHowで考える、明日の現場で何から始められるか。[ダイアログ]


講演発表の後は割りと長めの時間の中でのダイアログコーナーに。同席された方々総勢3名で、この日の内容と各人思うところを色々ディスカッションしておりました。

25分程のダイアログの後は、代表質問をそれぞれ付箋に書き出し、それを市谷さんと柳生さんがチョイスし回答していくというコーナーに。以下主だった内容のメモです。

  • UXを売るためには?
    • まだ売る段階には来ていない。コストセンター的な位置付けという意識。
    • お客さんに提供して価値を得るためには…?
    • 定量的な、数値的な部分を何らかの形で出す事が大切。
    • 定量化難しい→そもそもユーザの方から求められる、という事は無いのか?お客さんの方からのアプローチ。
    • 使い易いUI、直感的な使いやすさ、お客さんがそこにニーズを見出した時に対応出来るようにならないと。
  • エンタープライズならではのUX
    • コンシューマ向けのサービスなりアプリではUXの考え方は徐々に。
    • ではなく業務システムやエンタープライズシステム特有の開発モデル・関係性・立ち位置に対してUXをどうやって行けば重ねあわせていけるのかなと。
    • 受託でも出来る所からやり始めていけば。
  • UXノウハウの蓄積方法について
    • 実際ノウハウを持っている訳では無い。
    • 会社として取り組む:デザイン本部が取り組んでいた。そこに教えてもらった。
    • 座学だけではなく、施策を実践してみた。実際のプロジェクトを対象に。
    • 自分の会社の中でも協力者を募り、UXを実践してみた。
    • 勉強は書籍を使った。
    • HCD-Netに参加して情報を得た。
    • 産業技術大学院大学 年1回 15万 ワークショップ中心。お金と時間は掛かる。


最後に@chachakiさんから一言。

  • UXは学問もついてくる珍しい分野。ノウハウの蓄積もその辺に負う事が多い。
  • ゲーム業界はこの点先行しているものの、ノウハウは溜まっていない状態。諸刃の剣。
  • なのでアカデミックな分野の内容を吸収することで良い効果が期待出来るのでは。


DevLOVE x UXについては、同一タイトルで前回含め2回聴講した訳ですが、今回の方がより実践内容の紹介があったり、講演者&参加者間のディスカッションがあったりで疑問点が解消出来たり、有意義なディスカッションが行えたりで満足度は高かったような気がします。

ただやはりこの領域については、座学に加えて実践で試して見るという部分が何より不可欠。今回幾つかのプラクティスが紹介されていたので、取り入れられる所は取り入れてみて、職場・仕事に於けるUX度合いをより良く改善していければ…と実感致しました。

会場御提供頂いたKDDI ウェブコミュニケーションズ様、講演者:柳生様及び@papandaさん、また当日ご参加された皆様ありがとうございました!